運命の恋、なんて。
「そんな辛いなら…帰ろ」



いつの間にか泣いていたあたしを見て、八雲くんが近付いてきた。



お風呂から上がったのすら気づかないほど、考え込んでいた。



「ごめんね…あたし、だめだった。泊まりたかったよ、八雲くんと一緒にいたかった…」



「頑張った方じゃね?やっぱ、それが胡桃ちゃんのいいところかも。強行突破できない」



「革命、起こしたかったのに…」



「上出来。また、次があるよ」



あのやりとりを、またするのかと思うと成功させる自信がない。



それでも、その言葉が嬉しかった。



「送ってく」



「いいの、タクシーで帰れって言われてるの」



「俺のせいだから…送ってくよ」



まだ、一緒にいられることが嬉しくて甘えることにした。



八雲くんには申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、そこは気にしなくていいって言われた。



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