運命の恋、なんて。
家に入ると、お母さんがドアにへばりついていた。



「ただいま…」



心配、してくれてた?



もしかして、全部話を聞かれてたのかな…。



「あたし、疲れたからもう寝るねー」



素通りして部屋に向かう途中、お母さんが後ろからついてきた。



「もう、胡桃も大人なんだし…自由に恋愛していいのに」



なに?いきなり…。



「さっきの人は、そんなんじゃないの」



「それでも。男の子と一緒にいるの、久々じゃない?男友達を作るタイプじゃないし、もしかして…って思って」



「違う~、全然違う」



なにを勘ぐってるの?



本当に違うんだけど。



「彼氏ができたら、紹介してね。もう、とやかく言わないから」



どうして今さら?



その言葉を、あの頃聞きたかった。



もし、お母さんの過度の束縛がなければ…って、何度思ったか。



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