投げつけるから受け取って



「両思いだと思う」

「…………まさか」

「だって恵介、他の女子に鼻に詰めてるとかいわないし」

「それまだ言うか」




 腐れ縁とかいうけど、私は恵介のことが好きなのである。例えマスクの下では鼻水が酷くて詰めてるような女子でも。

 自分でもわかっている。

 鏡を見ると、二重で目は大きい方だけれど、その前に顔大きいし、ちょっとえらはり顔であまり可愛くないことを。愛梨は「そんなの化粧でなんとかなる」というけど、残念!化粧なんて肌さらさらになるようなパウダーとか、リップくらいしかないよ!

 女子力なんて、知るか!


 自分が、女の子らしいことをしているのが何だか変な気分でならないのだ。私服はズボンが多いし、色だってピンクとかいう色はない。

 いまだってそう。わざわざ愛梨に簡単に出来るお菓子のレシピを教えてもらったが、この私が作れるかどうかは、あまり自信がないのだ。



「まあ、うん。頑張ってみるよ」



 にやついた顔の愛梨を見ながら、私はレシピの"ここがポイント!"という文字を見た。



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