ヒカルハナビラ

母のものでもなく、父のものでもなく、普段連絡を取る友達のものでもなく。

その見慣れない番号に嫌な予感を感じざるを得なくなった。

「出ないの?」

と言われて透は我に返り落ち着いた自分を装って応答した。


低く冷静な印象をうける声から聞かされた現実は、やはりそうかと思う一方で疑えるものでもあり、受け入れ難いものだった。



キヨも何があったのかを察したようで、病院に向かう道中二人の間に会話はなかった。


急いで駆けつけた霊安室にはもう息をしていない両親の姿があった。



「交差点でトラックと衝突したそうです」


信じられなかった。
朝まで普段通り明るかった父と母がこんなにもあっけなく逝ってしまうとは考えられなかった。


「電気ショックとかしたら、心臓動くんじゃないんですか?」


キヨが素朴な疑問を投げつけた。


「止まってから時間が経ちすぎてしまったので、もう、動くことはありません。」


病院の人が丁寧に応えた。


「じゃあ、心臓移植すればいんじゃないの?」


どうにかして現実を覆そうと懸命に少女は質問した。


「心臓に問題がある訳では無いので、出来ないのです。」



もう何をしても両親が生き返らないことを理解したのか、遺体のそばに寄り
「苦しそう」と呟き泣き始めた。


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