CURRENT
だけど、静かに島村が去っていくのが分かった。
「諦めたか?……イヤ、まだだな」
そんなことを呟きながらも、私を抱き止めた手は離さない。
「ちょっと、何しているんですかっ!人前ですよっ」
「へぇ、人前じゃなきゃいいわけ?」
「そんな訳ないじゃないですかっ。
課長だっていう自覚はあるんですかっ」
「自覚はあるけど、今は1人の男だ。ただ、誰よりも梨沙が好きなだけ」
「だからって……え?」
聞き慣れない言葉が聞こえた気がする。
私今、何を言われた?
さっきの会話を頭の中で繰り返す。
そのとたん、ぼっと火がついたみたいに顔が赤くなる。
「梨沙がこういう反応するって、やっぱりあの女役立ったな」