CURRENT
「こんな時間にごめんね。
矢島さんはいつも残っているから、この時間がいいと思って」
歩きながら部長が話し始める。
だけど、話しの内容が見えない。
「この時間がいいって、あまり人に聞かれたくないことですか?」
「さすがだね。
でもまぁ、すぐにみんな逢うんだけど、その前に矢島さんには紹介しておこうと思って。
あの部署では、矢島さんがリーダー的存在だからね」
イヤ、そういうつもりはないのですが。
だいたい、部長がいるのにそんな訳がない。
でも、この話しの流れって、もしかして。
「課長が来られる……お話しでしょうか?」
「え?あ、知っていたの?」
「あっ……まぁ、ちょっと……」
つい口走ってしまったことに、部長が驚いている。
菜月が盗み聞きしたのを聞いたとは言えず、言葉を濁す。