CURRENT



私が何かを言う前に、彼が口を開く。


イヤ、確かにそんなこと言われた気がするけど、どう考えても仕事中。

仕事中ならいいじゃないかっ。


と、口を開きたいけど、彼の顔が近くにあるため、何も言えない。

少しでも動けば、また触れてしまいそうだから。



「このまま黙っていると、またするけど?」



ふいに彼の指が、私の唇に触れる。

またされるのはごめんだと、胸を押し返したけど、それよりも早く、彼の唇が触れた。

イヤ、触れるよりも深くなっていく。

コイツ、何してんだ?

人前だって、仕事中だって、分かってる?


抵抗するけど、全然離れてくれない。

周りの視線は、嫌でも感じる。

みんなが息を飲んで、じっと見ているのが分かる。

そんなに静かにして見ていないでっ。




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