CURRENT
真剣な声でそう言えば、頬にそっと唇が触れた。
それはすぐに離れて、ようやく体も離れた。
それが少し寂しいと思うなんて、気の迷いだ。
私は、なぜか出しかけた手を急いで引いた。
この日の彼の言葉通り、一切隠すことはなかった。
沖田陽子や他の子たちみたいにベタベタする訳じゃない。
だけど、普通に“梨沙”と呼び、抱き締めることは当たり前。
さすがに仕事中はしなかったけど、昼休憩には彼女たちに見せつけるかのようにキスを繰り返す。
誰がどう見ても彼からしているのが分かるから、彼女たちも何も言わなかった。
イヤ、何も言えなかったんだ。
彼を怒らせたら、容赦なく切り捨てられるからだ。
何もかも今更すぎるんだけど。
その証拠に、私につっかかってきた誤字脱字だらけだった子は、クビになった。
その後の直しでも、間違いは見つかった。
それが、致命傷となったのだ。
「矢島さんのせいなんだから、どうにかして下さい」