CURRENT
会社と違って、ここは完全に彼のテリトリー。
逃げ場はない。
ドキドキ、ソワソワしている私と違って、彼は普通だ。
まるで、友達を連れて来ただけのように。
それに、さっきの言葉。
取って食われる訳じゃないのなら、なぜここに来たのだろう。
私は、とりあえずソファに座った。
警戒心丸出しで、彼から離れて座った。
それも、分かっているんだろう。
彼は、笑っている。
「梨沙って、分かんないよね」
かと思えば、寂しそうな目で私を見る。
「いとも簡単についてきたかと思えば、そうやって警戒するし」
「え?だって、どこに行くか分かんなかったし……」
「そうかもしれねぇけど、ここの駅で降りた時点で気づいたでしょ。
嫌だったら、そこで逃げ出すことも出来たと思うけど」