ＣＵＲＲＥＮＴ

「逃げて欲しくなんかない。
ずっと、ここに閉じ込めておきたい。
梨沙が俺以外の男と話すのも嫌だ」



ぎゅっと抱き締められて、彼の胸に耳があたる。

私と同じかそれ以上に、彼の心臓がうるさい気がする。

それに、台詞がなんか危ない人みたいになってるけど。



「好きになって10年。とにかくがむしゃらに働いた。平社員じゃ、格好つかないと思って。
まさか、同じ会社にいるとは思わなかった。俺は転勤続きだったし、行った先の人しか知らなかった」


「もしかして、ずっとこの会社にいたの？」


「そう、いたんだよ。
転勤先がここにならなかったから、逢わなかったけど」



急にこんな話しをされて驚いたけど、逢わない10年間、同じ会社にいたことにも驚いた。



「梨沙がここにいると知ったのは、以前いた課長の話しを聞いた時」


「え？何でその時に……」