CURRENT
そう言って、私に書類を差し出す。
「ありがとう」
「あとこれ、ここの数字が違うんですけど……」
申し訳なさそうに差し出した書類は、菜月の言う通り数字が違う。
それは分かるのだけど、これは勝手に直してはいけないものだ。
上司の判断が必要となるもの。
そう、課長という名の彼の判断が。
「……分かった。ちょっと課長に報告するわ」
これで菜月に“課長に聞いてみて”と言ったら、いつもと違うと思われてしまう。
ましてや、私が頼んだ仕事だ。
仕事と割りきって話すしかないか。
菜月から書類を受け取り、思い腰を上げる。
ついでに、承認をもらうやつも一緒に持って行こう。
何枚かの書類を一緒に持ち、彼の元へ行く。
タイミング良く、1人でいた。