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「まさか、気づいていないとか言いませんよね?
あの柔らかい表情は、梨沙先輩にしか見せません。何より、話し方ですね」
「話し方?」
「梨沙先輩にだけ、敬語じゃありません」
「え?だって、同い年だし、上司だよ?」
「それだったら、彼女たちにも敬語である必要はありませんよね?」
「あ、それもそうか……」
何を言っても、菜月に言い返される。
なんだか、全てを知られているような言い方で、少し焦ってしまう。
「まぁ、梨沙先輩が簡単に思惑に嵌まるとは思いませんが。
気を付けて下さいね」
「え?何に?」
「……色々です」
結局、菜月が何を言いたいのか分からなかった。
それ以上は何も言わず、仕事に戻ってしまったから。