ＣＵＲＲＥＮＴ

「矢島さん、これ承認しといたから」



片付け中、急にそんな声が聞こえた。

見れば、中山課長が笑顔で書類を差し出していた。



「あ、ありがとうございます」



なぜか、逃げたい衝動にかられたけど、踏ん張って書類を受け取った。

そのあと、なぜか彼は菜月の椅子に座り、私に近づいてきた。



「あと、間違っていた書類のことだけど、直してデータ送ってもらったから。
矢島さんに転送しておいたよ」


「え？ありがとうございます。早いですね……」



そう返事をしながらメールを確認すると、本当に彼から転送されていて、きちんと直っていた。

これなら、当初の予定に間に合う。



「相手の不備だしね。急がせても問題はないよ」