CURRENT



初日に一応キツいことを言って見せたけど、それ以来何もない。

結局、全てが口だけなんだ。


そんなことを思っていると、ふと視線を感じた。

隣で手を止めたまま、私をじっと見つめる菜月だった。



「え、何?」


「んー……」



じっと見つめられたまま、菜月は唸る。

え、何かしただろうか。

だけど、少し考えたあと菜月は首を振る。



「何でもないですよ。大丈夫ならいいです」



なんだか中途半端で落ち着かない気もするけど、菜月はそれ以上何も言わずに仕事に戻った。

私もとりあえず、さっき彼に言われた書類をやってしまわないと。

催促されかねない。

あんなの、気にしている暇はない。

やらなきゃいけないことはたくさんあるんだから。

そう分かっているのに、なかなか仕事が捗らない。




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