CURRENT



「なんだ。梨沙は妬いているんじゃねぇの?」



少し小声でそんなことを言う。

妬いているという言葉より、名前で呼ばれたことに驚いた。

別れたあと、一切名前なんて呼ばれなかったのに、今更どうしてだろう。



「今更取られるのはおしいよな。
牽制しとかねぇと」



ぼそりと呟いた言葉の意味が、全然分からない。



「きゃあっ」



そう思ったとたん、急に抱きつかれた。



「ちょ、ちょっと、何してんのよっ」



慌てて離れようとするが、離れてくれない。



「大丈夫だって。酔ってのじゃれあいだって思われるから」


「それでよしとする訳ないでしょっ」


「それより、あの時みたいに圭って呼ばねえ?」


「は?何、言ってんの?」




< 73 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop