初めましてこんにちは、離婚してください 新装版

 貝の内側のように輝く、ハッとするような肌の白さと、けぶるような眉。
 黒目がちな瞳と同じ色の髪と、赤い唇の美貌は、おそろしく周囲の目を引いた。
 しかも様々な花が飾られた一台の花車模様の、本加賀友禅の色留袖を品よく着こなしている。


「わ、着物だ」
「きれいな人だね。モデルさんかな?」


 エントランスフロアで打ち合わせをしている社員がコソコソとささやき合う。


「すみません」
「いらっしゃいませ」

 受付嬢が営業スマイルを浮かべる。


「高嶺をお願いします」
「どちらのタカミネでしょうか。本社フロアには五百人の従業員がおりまして……」
「高嶺正智(たかみねまさとも)です」
「……それは当社CEOの高嶺正智でしょうか」
「そうです」
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