初めましてこんにちは、離婚してください 新装版
妻の涙、寝返りにキス

 莉央の突然の来訪の翌日。いつもより遅めに高嶺が出勤すると、エントランスがざわついていた。


「どうした」
「あ、社長!」


 声をかけられた男性社員が、少し困ったように肩をすくめる。


「その、社長の奥様が来られたと聞いて……見られないかってみんな騒いでて……すみません」
「なんだと」


 とっさに受付を見ると、彼女はジェスチャーで上を指差した。

 どうやら社長室に通したらしい。
 高嶺はうなずき、エレベーターに乗り込む。


(一体なんだというんだ……離婚を考え直したとか? だったら許してやらんこともないが……。)


 社長室に一歩足を踏み入れると、デスクの後ろ、総ガラスの窓の外を一生懸命覗いている後ろ姿が見えた。

 小さな茶色いバッグと白いコートを手に持ち、白いブラウスに水色のカーディガン、ネイビーのフレアスカートという、どちらかというと質素な普通の女性の格好である。


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