初めましてこんにちは、離婚してください 新装版

 平日のラッシュを過ぎた昼前で、電車は想像よりずっと空いていた。
 出入り口付近にもたれて立つ高嶺から、付かず離れずの距離で、莉央も立つ。
 目指す不動産屋は大手で、駅前の目立つところにあった。


(道案内なんて必要なかったみたい。)


 ホッとする莉央だが、高嶺は特に気にした様子もなく、外に向けて張り出している広告を興味深そうに眺めていた。


「じゃあ行ってきますから」
「お手並み拝見」


 高嶺はいつもの彼らしい微笑を浮かべ、莉央を見送る。

(もしかしたらここで決まってしまうかもしれないのに、どうしてあんな態度を取るんだろう。変な人。)


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