おなかすいてるならチョコあげる
「邪魔。神木」
「...え、あ、ごめんな、さい」
なまえ、呼ばれた。
ちょっと驚いて、そして嬉しくて反応が遅れる。
ハッとして急いでドアの前から退いて、道を譲った。
どうぞという目で見上げたのに、彼は教室に入らずに私を睨んでいる。
え、なんで。
「...誰が退けって言ったよ。早く入れっつったんだよ、俺は」
「....え、え」
「ホラ、入れよ」
「あ、は、ハイ...ありがとう」
トンと軽く背中を押された。
その押し方はすごく優しくて、ドアを開けながらなんとなく苦しくなった。
私が教室に入って三歩ほど歩くと、西山くんも入ってくる。
彼はそのまま、スタスタと自分の席へと歩いていった。
「.......」
一緒に、教室入れた。
ちょっとしゃべれた。『神木』って呼んでもらえた。
うれしい。すごくうれしい。