同期がオトコに変わるとき
「まさかふたりとも私だと思ってる?やだぁ、私なわけないじゃない。真辺にとって私はただの飲み友達で、ストレス解消の相手でしかないよ。この間会ったときは、そんな素振り一切なかったし。メガネ違いだよ」
手をぶんぶんと横に振って「あり得ないから!」と何度も言うと、ふたりはホッとしたように顔を緩めて「そうだよねー」と言った。
それからはほかの社員の噂に話が移っていき、小一時間ほど経つと、20畳ほどの会議室の中は丸めたポスターを入れた箱で床が見えないほどに埋まってしまった。
これを全部真辺たち営業が配って回るのだ。考えただけで気が遠くなる。
「お疲れ様でした。藤崎さん、ありがとう」
「どういたしまして。またお手伝いに来ますから、いつでも呼んでください」
大山さんたちにお疲れ様でしたと言って、会議室の前で別れる。
今日はすごいニュースを聞いてしまった。
鬼畜真辺に好きな人ができただなんて、まさかの出来事だ。
もしかして、この間の飲みで私が言ったことを気にして実行しようとしているのだろうか。
それにしても、好きな人を見つけるのが超素早いではないか。
どこかで電撃的な出会いをしたのだろうか。
それならきっと営業先の人だろうけど・・・でもあの真辺が?
にわかに信じがたいけれど、情報源が真田さんなら真実なのだろう。
マズイ、このままだと真辺に先を越されてしまう。