同期がオトコに変わるとき

「真辺君、随分盛大な寄り道ですね?」

「たまにはいいだろ?ノンビリしようぜ」

「のんびり・・・そっか、そうだね」


新緑の間を吹きわたる風が気持ちいい。

こうなったら、思いきり楽しもう。

わくわくふぁーむの中はミニブタとウサギが放し飼いになっていて、子どもたちがエサをあげたりして自由に触れ合っている。

あのエサはどこで手に入れたのだろうと見まわすと、エサの棚があって、並べられたお皿には小さくカットされた野菜がのっていた。

代金は貯金箱みたいな四角い箱に入れるらしい。


「エサは100円なんだ」


私も専用のエサを買うべくバッグからお財布を出していると、後ろから伸びてきた手が箱の中に硬貨を入れた。

チャリンと金属的な音がして、エサののったお皿を一つ取って私に渡してくれる。

買ってくれたんだ。


「・・・ありがとう」


真辺と一緒に手近にいるウサギにエサをあげてひとしきりたわむれたあと、ふぁーむ内をゆっくり散歩する。

手作りソーセージやパン作りの体験教室があって、時間を見ると本日は終了となっていた。

それにここは宿泊施設があって温泉もあり、真辺が「温泉に入るか?」と訊いてきたけれど、とりあえず止めておいた。

ひとまわりした後売店でソフトクリームを買って、人通りのない芝生の上に座って食べる。

空を見上げると飛行機雲が線を描いていた。

こんな風に日曜日を過ごすのはいつ以来だろうか。


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