同期がオトコに変わるとき
そのあとは帰路につき、真辺オススメのレストランで夕食を済ませた。
地元に帰ったのは夜の9時頃、今日は一日中真辺と一緒にいた。
「今日はありがとう。思わぬお出かけで楽しかった」
A駅に向かう途中でお礼を言うと、彼はアパートまで送ると言い出した。
「ずっと運転してて疲れたでしょ?駅でいいよ」
「いいから場所を言え」
何度断っても「送る」と言うので、甘えることにした。
「あのアパートか?」
「うん、ありがとう」
アパート前の駐車場まで来たので、お礼を言って降りようとするとパッと腕を掴まれた。
「藤崎、前に言ってた『別の方法』って何だ?」
一瞬なんのことかわからなかったけれど、すぐに塀での出来事を思い出した。
あのとき、別の方法を見つけたって話したんだった。
内緒にしてもいいけれど、腕を放してくれない真辺の様子が、すごく知りたくてたまらなそうで・・・。
「それはね、市主催の婚活パーティだよ」
「市の?・・・行くのか」
「今度募集があったらそうするつもり」
「俺が、行くなと言ったらどうする?」
「ど、どうって・・・あの、真辺に、そんなこと言う権利はないと思う・・・」
「権利か・・・そうだな」
真辺が顔をゆがめたのと同時に腕から手が離れたので、その隙に急いで車から降りる。
逃げだすように走ろうとすると、背後から「藤崎!」と名前を呼ばれた。
「受け取れ!」
「は?」
振り返るのと同時に大きな包みが放物線を描いて飛んできたので、必死で受け止める。
え?これって、まさか・・・。
大きな包みを抱えたまま、走り去っていく真辺の車を呆然と見送った。