同期がオトコに変わるとき

『もしもしー、私はあなたのお母さんですよー』


間の抜けた言い方で、頭がカクンと垂れる。

わが母の最初のひと声はオレオレ詐欺の逆バージョンみたいで、名前表示がなかったら速攻切ってしまいそうなタイプのものだ。

何度か注意したけれど『なんて言ったらいいかわからないもの』と、ちっとも改善してくれない。


「はいはい。お母さん。電話してくるなんて、何か進展があったの?」

『そうなの、朗報があるのよ!そっちのほうで、信用できる仲介人さんが見つかったのよ!』

「それだけ??」

『それだけって、真奈美。これってすごいことなのよ?』


知り合いの知り合いを伝って見つけた仲介人さんは凄腕で、まとめたカップルは500組を超えるのだという。

それが凄いレベルなのかさっぱりわからないけれど、個人で請け負ってる人の中では多いのだとお母さんは力説した。


『だから、すぐにいい人が見つかるから期待してて頂戴!』


自信たっぷりの弾んだ声のお母さんに「分かった。待ってるね」と言って通話を終える。

お見合いが一気に身近に迫ってきた感じだ。

お相手が決まれば、真辺の幻影も掻き消えるだろうか・・・。

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