同期がオトコに変わるとき
会社は繁忙期に差し掛かって、真辺をチラリとも見ることがなくなった。
おかげで私の心は平穏を保っている。
このまま距離を置いていけば、芽生えている真辺への気持ちが消えていくはずだ。
「はい、これが新発売の缶コーヒーです。好きなのを一本どうぞ。それからこれが一覧です。よかったらどうぞー」
「ありがとうございます」
仕事をしていると、営業課の大山さんが缶コーヒーと注文票を総務課まで配りに来た。
支社ではたまに新商品の試飲をさせてもらえる。
それに自社製品は社員割引で買えるから、好きな飲料をケースごと買って実家に送る人もいる。
私も、毎年実家に頼まれているので注文票をもらった。
今年の新発売リストには、お母さんの好きな天然水系のジュースがある。
欲しいかどうか家に帰ったら早速聞いてみなくては。そのついでに、見合いの進展も訊くのだ。
あれから2週間は経っているし、自信たっぷりに『すぐ』と言ってたのだから、そろそろ何か知らせがあってもいい頃だ。
月末が近くなって総務の仕事も忙しく、2時間ほどの残業をして家路につく。
コンビニでパンを買って帰ると9時を回っていた。
夕飯はパスタを作って食べ、いざ実家に電話をしようとスマホを取ったらLINEの着信が1件あった。
「真辺だ・・・」
『明日飲みにいかねえ?』とあって、どう返事するべきか迷う。
いつもだったらすぐに『OK!』と返すのだけど、今は・・・。