同期がオトコに変わるとき
「そりゃあそうだよ。私だって女だし、もう28歳になるし。なによりもこの歳で彼氏がいないなんて言ったら、もう母親がうるさくてさ。自分が28歳の頃にはもう結婚していた!って言うから、仕方ないって感じ。今は時代が違うのにね。その点男はいいよね。30前なんてまだまだ早いって感じだもの」
「そうだな・・・」
「だけど、真辺もそろそろ本気の恋をした方がいいよ。このまま気ままに彼女作ってふらふらしていたら、あっという間に40歳になっちゃって誰も相手にしてくれなくなるよ。ネットでよく見る婚活のCM『結婚なんてまだまだ先だと思っていた。(40代男性)』みたいになるかも。今度彼女ができたら、うんと大切にしてあげてよ」
「ふーん、本気の恋、ね・・・分かった、考えとくよ」
その気がなさそうに相づちをうつ真辺にため息を返す。
今は若いしモテモテだからピンとこないのかもしれない。
真辺がタバコの火を消したのを機に、レジを済ませてBARから出る。
春の夜風が火照った頬を心地よく撫でていく。
今夜は妙に明るいと思って空を見上げたら、満月に近かった。
月に照らされた雲がゆっくり流れていくのがよく見える。
「じゃあまた明日な」
「うん、バイバイ」
BARの前で停まったタクシーには私一人で乗り込み、彼は電車とかの別の方法で帰る。
真辺と飲んだ後はいつもこうだ。
彼は決して、その後というかその先をしようとしない。
キスはおろか手をつないだこともない。
彼にとって私は恋愛の対象外で、ただの飲み友達なのだと痛感する瞬間だ。