同期がオトコに変わるとき

「真辺さんって今フリーじゃない。つい最近、営業先の事務の子にコクられたんだって」

「またぁ?真辺さんってほんと、そういう話多いよねー。で、また付き合い始めたの?フリーなら、まず断らないって噂だよね」


いくらイケメンでも見境がない人って本当にイヤだーと、田村さんが飽きれた声を出した。

営業課の女子の中で真辺は「遊び人」と位置付けられていて、手を出してはいけない男になっていると言う。

自分から行動することはないとはいえ、あの鬼畜さは遊び人とされても仕方がない。


「それがさ、断ったらしいの。その理由がさ、“気になる女がいるから”だってー!あの真辺さんがだよ?」

「うそー!?気になる女って・・・コクられたの断るとか、気になるっていうよりも“好きな女”ってことじゃないの?信じられないー。あの真辺さんが?ね、それって、誰なの!?」

「分かんない。けど真田君がしつこく訊いたら、メガネをかけてる人だって、それだけ教えてくれたんだって。きっと理知的ですっごい美人なんじゃない?」

「メガネかけてる人?っていうのは・・・」


ポスターを丸める作業をぴたりと止めて、田村さんが私をじーっと見ている。

何を考えているのだろう。確かに私はメガネをかけているけれども・・・。

すると、大山さんまでポスターを箱に入れる手を止めて私を見た。

ふたりの顔が「お気の毒」とでも言いたそうに歪んで見える。

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