私があなたを好きな理由
「俺、嘘ついた。
ほんとは、佐伯に伝えたいことがあったから戻ってきたんだ。」
彼は頭をあげて私の手首を離す。
たった数秒の間だけだったのに、ぬくもりは離れてくれない。
「ガトーショコラ、旨かったよ。
また作ってくれ...ください。」
「え...
私の作ったの食べたの!?」
嶺緒奈...
なにしてくれてるの...
「でも、自分で作った方が絶対美味しいよ...」
だって、私より須藤の方がお菓子作れるんだから。
「や、それは、あのなぁ...」
なんで彼はあたふたしてるんだろう。
そんな彼を見て思わず笑ってしまった。