私があなたを好きな理由
「俺は、佐伯の作ったものを独り占めしたい。好きだから。」
私は、なにも言えなかった。
ただ、言葉がでないってこういうことなんだ、と思った。
「ごめん、ほんとはバレンタインの時に伝えようと思ってたんだけど...」
「なんで、私なの...?」
愛想もいいわけでもないし、頭がいいわけでもない。
須藤みたいにお菓子が作れるわけでもないし。
考えれば考えるほど自分が須藤に好きになってもらえる理由が見つからなかった。
「佐伯は...
いつも、美味しそうに物を食べるから。」
微笑みながらでた答えは、驚く他ないような理由で。
「そんな理由、なんて思われるかもしれないけど。
でも、それだけが理由じゃないから。」
そういいながら私の手から荷物をとると、教室の扉を開けた。
「返事はまだでもいいよ。
絶対惚れさせてみせるから。
俺、甘くするのは得意だからさ?」
なんてね、と笑いながら歩き出す彼に、私は顔をあげられなかった。
そんなこと言われなくても、今すぐ答えを伝えられるのに。