こちら、私の彼氏です
伊山……私に……合わせてくれた?


伊山の言葉に、なにも知らない愛理は予想通りテンションを上げ。


「ひゃー! おいくつですか? 年上ですか?」

「同い年です。会社の同期なんです」

「そうなんだー! ゆうちゃん、社内恋愛はまずないって言ってたのにー!」


……うん。伊山に限らず、基本的に会社の男性はみんなライバルくらいに思って仕事してるからね……。



ていうか、そんなことより……



伊山……?




「ゆうちゃん、今日はこのまま三人でご飯ってことでいいの?」

混乱してる私に気づくことなく、愛理が私にそう尋ねてくる。


「い、いや、伊山、くん……とも、今たまたま会っただけだから」

「えー、そうなの? いいじゃん、このまま三人で行こうよ。ふたりの話いろいろ聞きたーい」

「い、いやそれは……」


三人でご飯、はさすがにマズい。絶対ボロが出る……っていうより、さすがに伊山がそこまではしてくれるはずがない。



でも、愛理はこうと決めたらなかなか自分の意見を変えない。三人で行こう、とずっと言い続ける。




……そんな時、天の助けが。



「あっ、弘樹から電話だー。もしもし弘樹? うん、愛理だよ。……え、早い便で出張から帰ってこれそう⁉︎ やったぁ! じゃあおうちで待ってるー!」


そう言って電話を切った愛理は、「ゆうちゃんごめん! 今日のご飯、延期でもいいかな⁉︎」と謝った。


……大丈夫です。むしろ今日は早くひとりになりたい。


とはもちろん言えなかったけど、私は「うん、またね」と愛理を見送った。
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