こちら、私の彼氏です
協力してもらった
翌日、私はなるべく伊山を避け続けた。
泣き顔を見られたなんて思ったら恥ずかしかったし、なにより、またなにか嫌なことを言ってしまいそうで怖く感じた。


伊山は何度か私に話しかけようとしてくれたかなと思ったけど……なにかと理由をつけて、私はすぐにその場を離れ、伊山となるべく目も合わせないようにしていた……。



その日、仕事が終わって更衣室に向かう途中の廊下で、昨日みたいに愛理から電話がかかってきた。


……仕事が完全に終わる頃までなるべく電話しないでねって言ってあるんだけどな。



更衣室に向かいながら、もしもし、と電話に出ると、愛理はとっても楽しそうな声で……



私にとっては、とんでもないことを言った。



「改めて彼氏に会わせろ⁉︎」

私は思わず立ち止まる。


昨日は私の彼氏とゆっくりお話できなかったから、やっぱり三人でご飯行きたい、愛理はそう言った。


「いや、でも……か、彼がね、忙しい人で……」

『えー? 少しの時間でいいよ』

「えと……でも……」

『……ダメなの?
……もしかして、彼氏ができたことすぐに話してくれなかったのは、私に紹介するのが嫌だったから……?』

「い、いや、それはちが……」

ヤバい、このままだと愛理、泣くかも。
でも、ほんとに無理なんだもの、伊山を紹介するのは。
昨日はたまたまウソに協力してくれただけ。
しかもそのあとまたケンカしてしまったから、もう一度ウソついてもらうように頼むこともできないし……!



と、困っていたその時だった。



ーーひょい。


「あ」

うしろから、誰かが私の携帯を取り上げた。


振り返ると、それは伊山で。
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