こちら、私の彼氏です
「福島」

テラーの席でそんなことを考えていると、ふと名前を呼ばれ、顔を上げるととなりに次長が立っていた。


「はい」

「お、成績一覧見てるんだな。なら話が早い。お前も今回よくがんばったけど、同期の伊山がそれだけがんばってるんだ。お前ももっとがんばれ」

「……はい」

私のひきつった笑顔を気にすることなく、次長は自分の席へと戻っていく。



『同期の伊山ががんばってるんだから』



伊山ががんばってることなんて、誰に言われなくてもちゃんとわかってる。
でも、なんでもかんでも伊山と比べられて、私のがんばりがいつもムダになっている感じがしていた。

窓口でどんなにたくさん契約をとっても、どんなに新規顧客を獲得しても、どんなに資格を取得しても、いつも『伊山はもっとすごい』、『伊山をもっと見習え』って言われて。


べつに、周りに褒めてもらいたくて仕事をしているわけじゃない。仕事は好きだし、不満はない。

だけど、こうもいつも伊山伊山って言われると、いい気がしないのも事実だった。



福島 夕香(ふくしま ゆうか)。入社五年目の銀行員。

同期の伊山 早太の存在は、私の現在の人生における“三大悩み”のひとつだ。
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