こちら、私の彼氏です
「ま、まあ相手が私じゃなければもっと楽しかっただろうけどね!」

たった今、素直な気持ちを伝えられたばかりなのに、あまりの恥ずかしさに、私はそんなことを言ってしまった。


でも伊山は。


「なんでだよ」

「え?」

「彼女気分味わうなら、どうせならお前みたいにキレイな子の方がいいだろ」

「は!?」

「まあ、個人的な好みで言うならもう少し背が高い方がいいけど」

「んなっ、んなっ」


憎たらしさは少々あるけど、でも今日の伊山は、なんだか私のことを褒めてくれる。さっきも私のこと『仕事がんばってる』って言ってくれてたし……。
でも、『キレイ』って、そ、そんな風にも思ってたの?
お酒が入ってるから、勢いでそういうこと言ってくれてるのかな?



……いや。



『お前、若手の女性社員の中で一番契約数多いって部長が褒めてたぞ。すごいじゃん』

『取引先のお客さんが、窓口でのお前の対応が明るくて親切でいいって言ってたぞ。俺も見習うか』



……入社してまだ間もない頃、伊山はそういうことを私によく言ってくれてた気がする。


でも、その頃からすでに伊山は”期待の新人”って周りから言われていたから、その伊山にそんな風に褒めてもらったって、『どうせ自分と比べたら大したことないって思ってるくせに』なんて思ってしまっていて……。
だから、私は伊山の言葉を素直に受け止められていなかった。


……そんな私に、伊山はいつしか励ましの言葉をかけなくなった……いや、かけにくかったんだろう。私が、いつもかわいげのない態度をとるから。
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