こちら、私の彼氏です
「……伊山」

「ん?」

「その、いろいろほんとに、ありがとう……」

私のお礼を、伊山は「ん」とやっぱり短く受け止める。


伊山のこと、ライバルとして見なくなる……っていうのは難しいかもしれない。
でも、今までみたいにライバル心むき出しになるんじゃなくて、もっと素直に伊山と接していきたい。
伊山は、最初はそうしてくれていた。私が素直になれば、伊山もきっとそんな私を受け止めてくれる。

だって伊山は、いい奴だから。



私も、明日から、いや今から、伊山と初めて出会った頃に伊山のことを『いいな』と思っていた素直な自分の心を思い出し――……



いや、あの『いいな』は、確かに伊山のこと異性として『いいな』と思っていたけど、べつに完全に惚れてたってわけじゃないし、今だって、ライバル心むき出しにするのをやめるってだけで、伊山のことを恋愛対象として好きになるわけではなくてだな……!



……なんて、心の中で、誰にしなくてもいい言いわけを自分自身に必死にしていると、突然伊山がこんなことを言った。



「……とはいえ、まさかお前の性癖を知ってしまうとは思わなかったけどな」

「!」

そ、それはさっき愛理が言っていた余計な発言のことか!
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