こちら、私の彼氏です
十五時を過ぎ、窓口も閉まったところでいつも通り片づけの作業に入る。

勘定も伝票も合ったし、今日中の手続きの書類も検印に回し終えてる。


手が空いたので、営業室の外にある給湯室で、使用済みのコーヒーのカップを洗っていた。


その時。



「あ〜寒っ」

給湯室のすぐ横の社員用の出入り口が開いたのとほぼ同時に、伊山が給湯室に入ってきた。



「あ、福島いるじゃん。ちょっとコーヒー淹れてくれてくれない?」

肩をすくめ、両手をこすり合わせながら伊山がそう言うけど。


「ご自分でどうぞ」

「なんだよ。冷たいな」

そう言いながらも、伊山は特に気にする様子はなく、いつも通り自分でコーヒーを淹れ始める。


……そう、いつも通り。

私が淹れてあげればいいのに、でもそれができない。



……私の三大悩みのふたつめは、伊山との距離感だ。
< 3 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop