こちら、私の彼氏です
再鑑は誰に頼んでもいいことになっているから、今までの私だったら、なんとなく伊山には頼まない……けど。



――コト。

私は伊山のとなりから、伊山のデスクにお札の乗ったカルトンを置いた。



「さあ、数えろ」

「それが人にものを頼む態度かい? お前さんよ」

ぶつぶつ言いながらも、伊山はカルトンの上からお札の束を両手に持ち、数えてくれる。



……ほんとは、もっとかわいくお願いしたいんだけど。
もう長い間、ずっと伊山に対してツンとした態度をとってしまっていたから、やっぱり急にかわいくはなれない。


でも。
もっと素直にはなろう。
伊山に仕事をお願いしたり、困ったことがあったら頼ったり、そういうこともしていこう。せっかく、同期なんだし。



「ほらよ、再鑑したぞ」

数え終わったお札をカルトンに戻すと、伊山はそれを私に差し出した。



「……ありがとう」

「はいよ」

……伊山は相変わらず、いつもの短い返事。
……でも、いつもよりやさしく笑ってくれた気がした。







『私は伊山くんかな』

ああ答えた新入社員のあの時。
好きなタイプを聞かれてそう答えたあの日の私はきっと、伊山とこんな風に素直に会話をしていける関係になっていきたかったんだと思う。

……あの頃の私、ごめん。伊山と恋愛が関係にはならなかったよ。でも、遠回りはしつつも素直な会話はできるようになったから許してくれ。
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