こちら、私の彼氏です
伊山の耳元から顔を離そうとすると、振り向いた伊山と至近距離で目が合った。

自分から顔を近づけておいて、思わず、ドキっとしてしまった……。
ま、まさか振り向くとは……まさかこんなに近い距離で目が合うとは……思わなかったから。



「えと……ごめんっ」

急に恥ずかしくなって、私は急いで窓口に戻ろうと、伊山に背を向けた。


でも、そんな私を、伊山はなぜか「福島」と呼び止めて。


振り向くと、伊山はちょいちょいと私を手招きする。



……伊山はなんだか難しい顔をしていた。
急に不安になる。


顔近づけたのが嫌だったかな?
それとも、たとえお礼という理由があったとしても、やっぱり私とふたりきりで出かけるなんて嫌だ?



私が再び伊山のもとへ戻ると、伊山は眉間にしわを寄せ、私だけに聞こえるような小さな声で、言った。



「……急に耳元で囁くなよ。なんかエロい気分になっちまうから」



「……」


伊山にフザけた様子はとくになく、むしろいつも涼しい顔をしている伊山にしては、かなり真剣な表情だった。

こいつ……見た目は真面目そうでさわやかなのに……そういえばこの間も、『週五でヤりたい』とか言っていたし……



実はエロ魔人か!!




「最っっ低!!」

私の大きな声が店内中に響き渡り、当然、私は部長に怒られた。
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