こちら、私の彼氏です
だから、あの頃の私が今のこの状況を見たら、うらやましがるかも。“伊山くんといっしょに食事なんていいな”なんて……。



「福島、ウインナー頼んでもいい? 俺、居酒屋で女の子がウインナー食べてるの見るとちょっとドキドキするんだけど」

「うん。絶対頼まないで」


……前言撤回。伊山は想像以上のエロ魔人です、あの頃の自分よ。




それでも、伊山と話すのは楽しいと素直に思えるというのも本当だった。
仕事の話をしていても、たとえ下ネタでも、話していれば盛り上がるし、気をつかわない。話のノリも、合う方だと思う。


……もっと早く伊山に素直に接していれば、こんなに長い間ツンツンした態度とらなくて済んだのに。そもそも始めからツンとしていなければ、もしかしたら今頃、伊山と……なんて思ってしまう自分もいた。
もちろん、ライバル意識を持つべきじゃなかったとは思わないし、むしろ今もライバルには変わりはないけど……ほんの少し素直になるだけで、相手との距離がこんなに変わるのにな、と思うと、そこはやっぱり少しの後悔は残った。


……でも、今からでも遅くはないのかもしれない。
現に、今の私は伊山とこうして楽しく話せているのだから。
なら、これからさらに距離を縮めることもできるはずだ。




……って、あれ。距離を縮めてどうしたいのかな?

もしかして……私、あの頃の気持ちがよみがえってきてる?


伊山のことを異性として意識していた、あの頃の気持ちが……。
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