こちら、私の彼氏です
ホテルの部屋に入ると、部屋の入り口で、電気も点けずに伊山は私にキスをした。

伊山は私の顎に手を宛てながら、角度を変えて何度も唇を重ねてきた。

……気持ちよくて、力が入らなくなって、私は部屋の入り口に背を預けた。


……ドキドキする。自分から追いかける恋は初めてだから、勝手がわからない。


でも、もういい。プライドとか言っていられない。お酒にだいぶ酔ってるからというのもあるけど……私は伊山の首に両手をまわし、伊山に身を委ねた。



唇を離してから、伊山は私に尋ねた。


「あ、キスはしない方がよかった?」

「え?」

「なんかこういう時って、キスするべきかしないべきか、いつもちょっと迷うんだよな」


……こういう時、というのは、“恋人じゃない人とエッチする時”ということだろう。
そして、『いつも』ということは、伊山は恋人同士じゃない人とエッチすることが今までもよくあったんだろうな。


恋人じゃない人とエッチすることに抵抗はない、ってさっき思ったばかりなのに、伊山はそういうエッチを今までたくさんしてきたのかな……って考えたら、ちょっとだけ胸が痛んでしまった。




そのまま部屋の奥へと進み、ふたりで上着だけ脱ぎ、ベッドに倒れこんだ。
そして、また何度もキスをした。


深いキスを何度も繰り返し、全身がとろけそうになる。


伊山にとっては愛のないエッチだけど……さっきの私の行動で、私の気持ちは伊山にバレバレなわけで。

そのうえで、伊山は私の身体にやさしく触れる。

それがすごくうれしくて、そして心臓が激しく動いて、どうにかなってしまいそうだった。
< 45 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop