こちら、私の彼氏です
「えーと……まず、悪かった。お前がまさか、俺のことそんな風に思ってるとは知らず……」

「まあ……いいけど」

勇気を出して『好き』と言ったのに、それが伝わっていなかったのは少し、いやかなりショックだけど……酔ってたのは事実だし、誤解していたものは今さらいろいろ言ったって仕方ない。


でも、こんな形ではあるけれど、今度こそちゃんと私の気持ちを伝えたのだから、返事は欲しいと思う。



「い、伊山は……私のこと、どう思ってる……?」

おそるおそる、そう尋ねる。
さっきまでは『伊山も私のこと想ってるかも』なんて浮ついたことを考えていたくせに、今は、伊山からの返事が来るのが、怖い。



すると、伊山は。




「俺さ……入社したばかりの頃、お前のこと同期の女子の中で一番いいなって思ってたんだ」


「……え?」


ウソ……今、なんて言った? それってもしかして、今も私のこと……?



伊山は続ける。


「キレイな顔してるし、まつ毛長いし。なんていうかまあ……最初は『好みの顔だな』っていうか、見た目に惹かれてただけだったんだけど」

「う、うん」

「でも、ほかの女子と違っておどおどしてなくて、少し気は強そうだけど、いつの間にか、そういうところがむしろ好きだなって思ってたっていうか」

「え……」


今の……本当? どうしよう、すごくうれしい。
私も、新入社員の頃、伊山のこといいなって思ってた……気になってた……。伊山も、私のことそう想ってくれてたんだ……?




……だけど、キュンとしたのもつかの間だった。




「でも……配属されてしばらくして、福島の態度が少し冷たくなって」



ぎく、とした。
配属されてしばらくした頃……それは、早くも伊山に対してライバル意識を持ち始めた頃。私は確かに、その頃から伊山に対して冷たくなっていた……。



「そんでさ、それが結構ショックだったから、同期の女子の中に井上っているじゃん。俺、あいつに福島が最近冷たいって相談したんだよ」

「え……う、うん」

「そうしたら、その少し前の同期の女子の飲み会で、福島が俺のことを、もうあんまり話したくないって言ってたって聞いて」
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