こちら、私の彼氏です
ほかの同期の男性たちが仕事ができないというわけでは決してないけど、私は新入社員の時に伊山といっしょにこの本店に配属され、そこから今まで、伊山とはずっといっしょに働いている。

いつも伊山のそばで伊山の仕事ぶりを見ていた。

だから、新入社員として配属されて間もなく、伊山と比べられる日々がまだ始まっていなかった頃は、伊山のことを純粋に、“仕事のできるかっこいい人”と思い、実は結構異性として気にしていた。


ほかの同期も、伊山くんいいよね、と言っていたけど、その場にいた同期の女子たちはすでに彼氏持ちの子がほとんどだったから、なにげに応援してくれる人が多かった。
私は、同性の友だちに対してもちょっと素直になりにくい性格をしているから、伊山のことを気にしている、とは誰にもはっきりとは言わなかったけど、応援してもらえてることは本当はうれしかった。



……だから、初めは『もしかしたら本当に伊山くんと付き合ったりできるかなぁ』なんて思ったりした日もあったのだけれど……



日が経つにつれて、伊山と比べられるようになり、伊山に対するライバル心がどんどん大きくなっていってしまい。
そのライバル心が大きくなると、伊山に対してツンとした態度をとるようになってしまっていた……。


入社当時に抱いていた『伊山くん、ちょっといいな』という感情も、すっかり小さくなってしまっていた。
もちろん、人として嫌いなわけはないけど……。


でも、恋愛対象というよりはライバル、いつしかそんな風に思うようになっていた。



普通の会話はできるのだから、悩ましいってほどのことでもないかもしれないけど……入社して間もない頃はもう少し仲よかったよなぁ……なんて思うと、私の負けず嫌いな性格をほんの少し恨んだりもした。
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