こちら、私の彼氏です
ほかの女性社員がみんな帰った頃、私はようやく通常の残務を終え、これから手数料の入力直しを行うところだった。



ふと、制服のポケットに入れておいた携帯を見ると、ちょうど着信がきた。


定時は過ぎてるし少し電話するくらいならいいか……と思い、私は誰からの電話かよく確認せずに、携帯を持って廊下へ出た。


廊下へ出て、携帯のディスプレイをちゃんと見ると、“木本 愛理”の文字が。



……なんだろう。ディスプレイに表示されたその名前を見ただけで、少し……イラっとしてしまった。



「……もしもし?」

電話に出ると、愛理の『もしも〜し!』という、いつもの明るくて陽気な声が聞こえた。



「どうしたの?」

『ゆうちゃん、これからヒマー? あのね、うちらが通ってた高校の近くに新しく居酒屋さんオープンしたんだって! 全然知らなかったよね〜! 今日、弘樹が帰ってくるの遅いから、いっしょに行こー』

「……ごめん、今日は仕事が終わらなくてどうしてもムリ」

『えー、いいじゃん仕事なんて適当に終わらせてくれば!』


……その言葉に、なんか本気でイラっとした。
愛理がこういうことを言うのは今に始まったことじゃないし、悪気がないのはわかるから今まではさらっと流してきたけど……。

今日は、いつもみたいに受け流せるほど、気持ちに余裕がなかった。



でも、なんとか必死に気持ちを抑えて、「ほんとにムリだから、べつの日にして」と言うと、愛理は。
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