こちら、私の彼氏です
「寒っ」
会社を出ると冷たい風が体に巻きついて思わず声が出た。
毎日寒いけど、今日は一段と寒い気がした。
駅に向かって歩き出そうとした、その時だった。
「福島さんっ」
その声に振り向くと、会社から後輩の本田くんが走ってきた。そういえば、本田くんもさっきまで営業室に残ってたっけ。
「本田くん。どうしたの」
「俺もこれから帰るんです。駅までいっしょに行きましょう」
本田くんにそう言われ、私は「うん」と答えた。
駅までの道、本田くんとはたわいもない話を続けたけど、普段は本田くんとはあまり話さないため、途中で会話が途切れてしまった。
なにか話題ないかな、と考えていると、本田くんが口を開いた。
「あの、福島さん。俺、これ言っていいかわからないんですけど……」
「ん?」
「俺、さっき仕事してたら伊山さんからLINEきて、福島さんと帰る時間が同じになりそうだったら駅までいっしょに行ってやってくれって言われたんです」
「え……?」
ウソ……伊山がそんなことを……?
「伊山さんと福島さん、仲いいですよね。同期ですけど、付き合ってるわけではないんですよね?」
「つ、付き合ってないよっ」
「そうですか」
本田くんは、私と伊山の関係にとくに興味はなさそうだったけど。
伊山……私のこと心配してくれてたんだ……。
金曜日にあんなことがあって、ついさっきは、あんな嫌なことを言ってしまったのに。
いっそ嫌いになりたいと思うのに、そんな風に心配してくれたら、ますます……好きになってしまう。
……だけど、正直今は、伊山のことより……愛理のことを考えてしまっていた。
会社を出ると冷たい風が体に巻きついて思わず声が出た。
毎日寒いけど、今日は一段と寒い気がした。
駅に向かって歩き出そうとした、その時だった。
「福島さんっ」
その声に振り向くと、会社から後輩の本田くんが走ってきた。そういえば、本田くんもさっきまで営業室に残ってたっけ。
「本田くん。どうしたの」
「俺もこれから帰るんです。駅までいっしょに行きましょう」
本田くんにそう言われ、私は「うん」と答えた。
駅までの道、本田くんとはたわいもない話を続けたけど、普段は本田くんとはあまり話さないため、途中で会話が途切れてしまった。
なにか話題ないかな、と考えていると、本田くんが口を開いた。
「あの、福島さん。俺、これ言っていいかわからないんですけど……」
「ん?」
「俺、さっき仕事してたら伊山さんからLINEきて、福島さんと帰る時間が同じになりそうだったら駅までいっしょに行ってやってくれって言われたんです」
「え……?」
ウソ……伊山がそんなことを……?
「伊山さんと福島さん、仲いいですよね。同期ですけど、付き合ってるわけではないんですよね?」
「つ、付き合ってないよっ」
「そうですか」
本田くんは、私と伊山の関係にとくに興味はなさそうだったけど。
伊山……私のこと心配してくれてたんだ……。
金曜日にあんなことがあって、ついさっきは、あんな嫌なことを言ってしまったのに。
いっそ嫌いになりたいと思うのに、そんな風に心配してくれたら、ますます……好きになってしまう。
……だけど、正直今は、伊山のことより……愛理のことを考えてしまっていた。