こちら、私の彼氏です
すると、愛理は。



「……ちゃんと言ってくれるの、ゆうちゃんだけだから」

「え?」



愛理はにっこりと笑いながら、私に座るように促した。


私は戸惑いながらも、部屋の中へと入り、ふすまを閉め、愛理と向かい合う形で、こたつのテーブルを挟んで座った。



愛理は話を再開させる。


「ほかの友だちは、そういうことはっきりと言ってくれないんだよ。私もさ、実は自分の性格は直さなきゃってずっと思ってたんだけど」

「愛理……」

「弘樹も、両親も、私のこと怒らずに甘やかしてばっかだから、私もどんどんわがままになっちゃって。


だけど、ゆうちゃんだけは学生の頃、はっきり言ってくれてたよね。宿題しなさいとか、カバンの中の片づけをしなさいとか」


……あぁ、確かに言ってたかも。昔の私は、かなりの世話焼きだった。今思えば、かなりうっとおしいくらいに愛理にいろいろ注意していたように思う。




「……でも、高校卒業してからは、あんまし注意とかしてくれなくなったよね」

そう話す愛理の表情は、少し寂しそうなもので。


「それは、卒業して毎日学校で会わなくなってもいろいろ言うのはさすがにウザいかなと思って……」

「うん、わかってる。私に気をつかってくれてるってことは。でも、本当は怒ってほしかったんだ。ゆうちゃんだけが私のことを怒ってくれる……私のことを怒ってくれるゆうちゃんが、大好きだから……。
社会人になってからは全然怒ってくれなくなってたのは事実だから、この間、電話でああ言ってくれて……もちろん少しはショックだったけど、私、やっぱりうれしかった」

「……っ」


……愛理のその言葉を聞いた瞬間。
私は、ずっとガマンしていた涙を堪えきることができなかった。
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