こちら、私の彼氏です
「伊山……⁉︎」

ど、どういうこと⁉︎ なんで伊山が愛理の家にいるの⁉︎



伊山は、出てきたはいいものの気まずそうな顔でぽり、と頬をかいた。



そして、愛理は愛理で、なんてことのないように言った。


「あー、なんか疲れちゃったなー。ゆっくり休まないと胎教にも悪そうだし、ふたりとも、今日は早く帰ってくれる?」

にこにこ笑いながらそう言う愛理に、私はなんて言えばいいのかまったくわからない。状況が読みこめない。



「……とりあえず、帰るぞ。愛理さん、いろいろありがとう。おじゃましました」

伊山がそう言って、私の右手を握り、引っ張るように歩く。


「ちょ、ちょっ」

なんで伊山がここにいるの? いろいろありがとうって、なにを話したの?
ほんとにいったいどういうことなの。聞きたいこと、言いたいこと、たくさんあって、この前みたいに手を握られてることにドキドキする余裕は、今はなかった。


笑顔で「また来てね」と言ってくれた愛理の笑顔を見ながら、私は伊山といっしょに部屋を出て、そのままアパートもあとにした。
< 65 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop