こちら、私の彼氏です
こちら、俺の……
あれから二ヶ月が経った。



私と伊山の関係に、これといった発展は特にない。



確かに、前よりは距離はいくらか……いやずいぶんと縮んだ気は、する。


仕事終わりや休日の予定が合えば、ふたりでご飯に行ったり、買いものをしたり。
スノボ、この冬は結局行けなかったけど、じゃあ来年行こうって伊山が言ってくれて、その言葉だけですごくうれしかった。



キスは、前までは時々、そして最近はよくしてくれるようになった。
……エッチも数回、した。


そんな感じだから、あれ、これってもしかして私たちいつの間にか自然にもう付き合ってるってことかな? と思ったこともあったけど……


でもこの間、書庫室で書類を探していたら、書庫室の裏の廊下で伊山と営業課の先輩が話しているのが聞こえてきた。先輩は伊山に、こう聞いていた。


『伊山って、今彼女とかいるのか?』


ふたりが話している廊下から書庫室は死角になっているから、隠れていればふたりが私の存在に気づくことはない、と、私は悪いと思いながらもふたりのそんな会話に聞き耳を立てていた。


すると伊山はこう答えた。


『彼女? いません』



いないのかーい。私やっぱり彼女じゃないんかーい。


そりゃ、社内恋愛がバレたらどっちかが異動させられちゃうから、仮に私と付き合ってたとしても『彼女はいません』って答えるかもしれないけど……でも、その時の伊山の答え方はそういう感じじゃなくて、ほんとに素の答えって感じだった。




……もう一回、告白した方がいいのかな? でも、次に告白したら三回目か……さすがにくどい? いや、告白は何度でもしていいって愛理に言われたし、私もそう思うし……でもきっかけが……。





寒い冬も終わり、季節はもうすぐ春を迎えようとしているというのに、私の恋に春が来る様子はまだなかった。
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