こちら、私の彼氏です
それから二週間後の金曜日のこと。

私と伊山は、仕事が終わって十九時頃を少し回った頃、いっしょに愛理の家へおじゃました。

今日はちょうど、弘樹さんも帰りが早い日だということで、四人で食事をすることにした。



食事のメニューはすき焼きだった。
私はひそかに感動していた。愛理がひとりですき焼きの用意をしてくれていたから。
すき焼きだから決して料理ってほどじゃないけど、今までなんの食事の用意もしてこなかった愛理が、私たちの食器から食材までキレイに揃えてくれていたのが、単純にうれしかった。

私がキツいことを言ってしまったあの日から、愛理が少しずつ食事の用意をしてくれるようになったと、あとから弘樹さんがこっそり教えてくれた。

キツいことを言ってしまったのは申しわけなかったけど、こうして物事が少しでもいい方向に変わっている部分があるのなら、私と愛理の関係にムダなことはなにもなかったと思える。



「カンパーイ」

弘樹さんのやさしい声での乾杯で、私と伊山は途中のコンビニで買ってきた缶ビールをいただき、妊娠中の愛理と、愛理に合わせて今日はノンアルコールな弘樹さんはオレンジジュースに口づけた。

私と伊山も、妊婦さんの前でアルコールを飲みまくるわけにもいかないので、今日はこの一本だけにする。



ほどよく盛り上がってきた頃、気づけば伊山と弘樹さんがだいぶ親しく話していた。性格はだいぶ違うふたりだけど、相性はいいのかもしれない。私と愛理がそうみたいに。
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