こちら、私の彼氏です
「じゃあ、また来るね。ばいばい」

愛理と弘樹さんに見送られ、私と伊山はいっしょにふたりの家を出た。




……となりを歩くことが、なんだかそわそわして落ち着かない。伊山は特に普通にしているのに。私だけが、なんだか妙に意識しているみたい。



「福島。手、つなぐ?」

「なんでよ! 嫌だよ!」

「嫌なの⁉︎」

伊山がショックを受けたような顔で驚いた。まあ、ここしばらくはふたりきりの時は手をつなぐこともあったし、それでなくても今の私たちは恋人同士なんだから、むしろ手をつなぐ方が自然なんだろう……。


でも、恥ずかしい。私と伊山、両思いなんだ、って考えたら、手をつなぐことすらすごくすごく恥ずかしく感じて。

見つめ合いたいけど、真っ赤になってるだろう顔を見られたくないから、私はさっきからずっと伊山から顔を逸らしてる。



「顔……逸らすなよ」

伊山が静かに私にそう言った。


今さっき、『手つなぐ?』って聞いてきた時は、明るくて少しおちゃらけた感じの明るい声だったの……今は、真剣にそんなことを言うから。

ドキドキして、ますます胸が高鳴ってしまう。
伊山は、私をどうしたいの……。




「無理だよ……恥ずかしいの、顔を合わせるのが……」

「今までも、すでに付き合ってたようなもんだったじゃん」

「そ、そうかもしれないけど……でも、やっぱり全然違うの。今までは、私たちは会社の同期だった。でも、今は……恋人、だから……。同期と恋人は……全然違う」
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