ハイスペックガール









「……ん!……きろ!」

誰かの声が聞こえる。


なんで……家には誰もいないはずなのに……。

うっすらと目を開く。



っっっっ!!!


「な、なんで……」

「夕飯だ。起きろ。あ、凛の着替え。」


女性の部屋に入るときはしっかりノックを……


「言っとくけどノックしたから。」


……。冷静に。冷静に。従うって決めたんだから。

真顔でいこう。

渡されたのは、着物だった。

広げてみると、淡い黄色で、コスモスが刺繍されていた。





「みんな着物だから。」


へぇ。暴走族なのに?



「でも私、着方知らないし。」


これもまた、真顔で、平然と言った。


「は?それでも日本人かよ。」

ムカッ。


日本人でも知らない人いっぱいいるし。

そこ言葉にはなにも返さないでいた。



「着付けしてやる。脱げ。」


……は?脱げ……?

「今、なんて?」

「だから、脱げ。」


男の前で脱げるわけないでしょ。

「勘違いすんなよ。俺はここから一旦出るからな。このタンクトップとスキニーを上からはいとけ。」


そう言うと、タンクトップとスキニーを投げつけられた。

「わっ!!」

顔面に直撃したのだった。









あれから30分後、やっと着付けが終わった。

もう真顔をキープすることはできなくなっていた。


「きっつ……」

「ゆるい方だ。」


こんなんで食事したら戻って来ちゃうよ。


「なにやってんだ、行くぞ。」




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