ハイスペックガール

暗い街








私の朝は起きることから始まる。


当たり前だけど。


「行ってきまーす。」

返事は返ってこなかった。


ゆっくり歩いていたせいか、いや、出るのが遅かった。もうチャイムがなってしまった。

あーあ。

入学式早々遅刻するなんて、ついてないな。

私は小走りで無駄に高い門をくぐった。



ガラガラっという音を立ててドアを開く。
「あの。」

遠い高校を選んだから、知りあいがいない。

第一印象が大事なのに……


知らないたくさんの顔が一斉に私に向いた。


「あ、えと、あの。遅れてすいません。柳沢茜です。」

「ああ、席はそこ。あとで職員室に来なさい。」

うげぇ。絶対説教だよ…。昨日もっと早く帰ればよかった!!


私はいそいそと席についた。

「ヤナザワ…さん?だっけ!よろしく!初日から遅刻なんて災難だね」


隣に座っている髪の毛がワックスでかたまっている男がクスッと笑いながら言った。

ガチガチな髪の毛とは対照的に、表情は柔らかく、優しそうな顔をしている。


いい印象をもった。


「よろしく。寝坊しちゃって…。滅多にしないんだけど…名前聞いても?」


その男の子は目を細めて愛想よく笑った。


「そーなんだ。俺も朝には強い方かな。佐上浩太!浩太でいいよ」



浩太は握手を求めるように左手を差し伸べてきた。

左利き……なのかな。



「浩太ね。茜でいいよ。」


つい癖で右手を出してしまったけど、慌てて左手に変えた。



「あ、ごめん。俺、さっき右手怪我してさ」


チラッと右手をみたけれど、何も手当が施されていなかった。


捻挫かな……?


少し腫れているようにみえる。


「気のせいじゃない?」

私は笑顔でそう言い、浩太の右手を軽く握った。


「いっっ!!…たくない…」

浩太は驚いた表情で右手を見つめた。

「一時的な痛みだったんじゃないかな?私もよくあるよ」


私はパチリとウインクして見せた。



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