ハイスペックガール
今日は治しに行くんだよね。
髪の毛邪魔かな……。
私は髪の毛を三つ編みしてから、お団子のように一つにまとめた。
そこに簪(かんざし)を刺した。
着付けも……合ってるよね?
なにせ初めてだから、上手くできた自信はない。
丁度いいタイミングでノック音がした。
「終わったよ。」
私がドアに向かって言うと、すぐに浩太が入ってきた。
浩太は私を見るなり、驚いた顔をした。
「なに。」
私がすかさず聞くと、
「着付け下手だな。」
と返してきた。
「浩太が作った着付けの紙通りにやったけど?」
だから下手なのはあの紙に違いない。絵が壊滅的だったし。私はそんなに不器用じゃない。
「凛、化粧をしろ。」
私の肌がボロボロだと言いたいのか。
「嫌だ。化粧嫌い。」
ワガママ?全てに従いたくはない。
「この暴走族は女を入れることを禁じている。それをなくしてまで凛を入れたんだ。凛は、族の象徴のようなものだ。
綺麗にしろとマキさんが。」
全てはこの族のためで、私の気持ちなんか関係ないってわけね。
浩太はマキさんマキさんって言うけれど、あの人の何が一体みんなの尊敬の的になっているのか。
「はぁ。」
私は浩太が持っている化粧ポーチを取り上げて、鏡の前に座った。
ファンデを顔全体に伸ばしていく。
「ねぇ、昨日の夜思ったんだけど、年齢層バラバラだね。」
私たちは高校生の代だけど、昨日の席にいたのは、大学生、中学生も、大人もいた。
もちろん、高校生も。
年とっている人は流石にいなかったけど。
「まあな。年齢は関係ない。能力次第だよ。何か特別な能力を持っていると、ここに住むことができる。
幹部とか言うけど、天龍は規模がデカすぎてそれどころじゃない。
大きく見れば、ここにいる人たちはみんな幹部のようなもの。
位が上なんだ。」
へぇ。じゃあ他にもこーゆー場があるということだよね。
「特別な能力…って私みたいな?」
人間にはあり得ない能力を持っている人が他にもいると?
「それはいねぇな。あくまでもハッキングとか喧嘩とか……」
なんだ。まぁ、いるわけないよね。
こんな……化け物。
「凛……化粧上手いな。」
手際の良さに驚いたのか、そんなことを言ってくる。
「顔を隠すのは得意だからね。」
今日は別に隠すわけじゃないからナチュラルだけど。
化粧を終えて、マキと、他数人連れてここを出た。